夢の中へ

見合い相手は、「今どきの若者には夢がない」と言った。

「なんで引きこもるんだかわからない」とも言った。

それから、カラオケに行って飲もうと言った。

・・・私は、”普通”のことをしている自分が嬉しかったけど、アイドル歌謡が、内心馬鹿馬鹿しかった。

その人は、でも充分満足した様子で、「君を守りたい」という唄を歌って〆にした。...

私は今度は、美術館に行きたいと言いたかったけどそれは無理だった。

結局、銀座で蕎麦屋のカレーを食べることに決まった。

別れ際に、夜の灯りにその人の顎はたるんで見えた。

私の残酷な目線に気が付いたかのように、ふと、その人は

「俺、年寄りだから」と呟いた。