Neglect

私が幼稚園児から小学校にあがるかあがらな
いかの頃母親が狭い台所でお前なんか産みた
くなかったけどできちゃったおろしたかった
けど結婚する前にもうひとり遊んだ人とおろ
したしその時は産婦人科で両足をぱかっとひ
らかされてとてもこわくてでも胎児は無事に
えぐりだすことができてそのおかげでせっか
くお父さんと結婚できたのにまたできちゃっ
てめんどうだからまた一人おろしてあんたが
できてでももうあたしの体にも悪いし経済も
余裕が出来てきてたからなお世間体が悪いし
仕方なく産んだのよと憎々しげにわたしに言
ったその頃のわたしはもう書斎のむずかしい
文学全集に手を出し始めた頃でだいたいの意
味はとれたもともとその頃なにかに失敗する
と母親に納戸に連れ込まれてお仕置きに悪戯
をされていたからそんなことかとおもって泣
きもしなかったらなお怖い目でにらまれた母
親は料理を作ってどんとならべて夜はてきと
うにふとんをひくだけだったから弟とふたり
で適当にそのへんで寝た母親はべたべたのフ
ライドポテトくらいしかまともに作れなくて
顔の洗い方も靴の紐の結び方もなんにもおし
えなくて父親は仕事で忙しいと言って始終う
わきしていたらしくどこにいたのか全然覚え
ていないきっと母親の言うように社長の片腕
で接待されていたのだろうちゃんとしたおう
ちですねと外に出るとみんなわらうから適当
に合わせることしかできなくて学校ではどう
してどもるのかと叱られて帰って来たよるは
恐ろしい折檻が待っていた家はあったでもい
えはかぞくはかていはどこにもなかったです

生まれて来たらアウシュヴィッツにいました