ロンリー・ガール・ミーツ・ア・ボーイ〜「きみにしか聞こえない」

これは孤独な少女と青年の出会いと別れの物語である。横浜に住むリョウ(成海凛子)は、小学校時代のトラウマで、ほとんど親とも友人とも口がきけない。そんな彼女がある日、公園で拾ったおもちゃの携帯からある青年の声がする。彼、椎名(小出恵介)は、長野のリサイクルショップのろうあの店員で、この「きみにしか聞こえない」不思議な声で、彼女に「会話」を教えようとする。

横浜と長野のロケの風景の美しさもさることながら、二人の表情が実にいい。リョウがだんだん心を開いてゆくさまや、椎名が他の店員に馬鹿にされながらも、明るく自信に満ちてゆく姿が素晴らしい。

結局、東京で逢う事になった二人だが、リョウをかばって椎名は交通事故で亡くなる。そしてリョウに「あなたは一人じゃない」というメッセージを手話で残す。はじめて大声の出るようになったリョウは泣き崩れ、その後椎名の実家を訪れて、椎名の母(八千草薫)に会い、屋根から長野の夕日を見つめるシーンで終わる。

一番心に残ったのは、「あいつ(椎名)は、なおしたものはなおした人のことをずっと覚えてるって言う。だから修理するのも好きだし、別れるのもつらくない」との椎名の友人(岩城滉一)のセリフだろうか。そんなこと言ったって、リョウはものじゃないんだから、やっぱり椎名に「なおして」もらったからって椎名が自分のせいで死んだら、ものすごくつらい(つらかった)と思うのだが。

話を悲劇にするのはどっちかというと簡単なので、終盤の盛り上がりと言える事故のシーンでいささか興ざめ。

アンハッピーエンドにしないで欲しかった映画。

音楽・ドリカム、原作・乙一、監督・荻島達也。