なわとび

 夫が、首をつった。
 幸手に、20年ローンの庭付き一戸建てを
買って、引っ越したあくる朝に。
 「俺はもう疲れた」と、一言だけ遺書を残
して。
 あたしたち家族は、毎日毎日、天井のシャ
ンデリアからぶらんと垂れた縄の下で、ご飯
と味噌汁を食べた。次の日も、その次の日も、
ご飯と味噌汁を食べ続けた。
 一週間目に、あたしは思い切って、テーブ
ルの上によじ登り、夫が首に巻いた縄を、よ
うやくの思いで、取った。
 あたしは、縄を両手に持ちかえて、さんさ
んと日の降り注ぐ、広いリビングで、縄跳び
をした。
 「お嬢さん、おはいりなさい。おはいりな
さい。負けたお方は、お出なさい」