栄光

 俺の親父は、頑固者だった。
「何故、こんな事も出来ん!」
 俺は決心した。・・・いつか、T大に入る。
そして、金をがっぽり儲けて、女に何不自由
ない医者になってやる。
 俺はがり勉した。教師には媚びへつらった。
弱い奴は虐めまくった。
 合格通知の春。俺のところに届いた電文は
こうだった。「サクラ、チル」
 そんな筈はないだろう。
 俺は、出刃包丁を片手に、安田講堂に乗り
込んだ。とめてくれるなおっ母さん。
 遠くから、サイレンの音がする・・・警察
か・・・いや、救急車だ。
 20年後。晴れた冬の日。病院を退院する
俺の右手には、親父の形見のブルガリの時計
が燦然と輝いていた。