純情男子☆LOVE!〜「キサラギ」

これは一人のD級アイドルの死にまつわる、ファン(小栗旬)・友人(小出恵介)・マネージャー(ユースケ・サンタマリア)・幼馴染(塚地武雅)・そして父親(香川照之)のある一日の密室劇なのだが、この5人のキャラクターは、「恋人」というものの5つの側面を見事にあらわしているとは言えないだろうか・・・?

映画中では、ネットの掲示板に惹かれて集まった5人の男が、彼女(如月ミキ)の死について論議し合うという事になっているが、これはすなわち1人の男の内心を、5つに振り分けた心理劇と見る事も出来る。そう、これは1人の男の1人の女の子に対するオマージュなのだ。

さて、その当人如月ミキだが、彼女はほとんどこの映画に登場しない。ルックスも姿も影のようで、最後まで判然としない。これは1人、いや5人の男の「夢の女」とも言える・・・何しろ彼女は、D級とは言え「アイドル」なのだから。日本版のこの死んでしまったファム・ファタールに対する男達の思い入れの固まりとも言える映画だ。

最後に、彼女を殺したのは誰でもなく事故死だったと言う結論にたどり着いた途端、1人の謎の男(宍戸錠)が現れて、他殺だと叫ぶので、真相は闇の中なのだが、結局5人の善意というより一種の優柔不断さが如月ミキを殺してしまったとも取れるところが面白い。こんなカッコいい男5人に惚れられたあげくの女の子の「死」はなにか残酷にも思えなくもない。

男は、いつも愛する女には自分勝手で我が儘な純情を抱いているものだ、とつくづく思う。

芸達者な役者が揃っているが、特に如月ミキのよき友人というか顔馴染みの雑貨屋の兄ちゃんであった、という’スネーク’こと小出恵介のキャラが傑作。

原作・脚本、古沢良太、監督・佐藤祐市