ロックンロール・ウィドウ〜「嫌われ松子の一生」

珠玉作「下妻物語」の中島哲也監督の真骨頂を見せた作品である。

これは、今流行の恋愛依存症の女の一生を画いた映画であるが、ここに出てくる男達がとにかく酷い。特に準主役の二人がひどい。

まずは瑛太一人二役なのだが、松子が夢中になる文学青年を片方でまず演じていて、こいつが松子との不安定な生活に疲れたあげく、勝手に筆を折って、線路に飛び込んで死んでしまう。

それから伊勢谷夕介。もとは松子の教え子で、おちぶれた松子を慕ってやってくるのはいいのだが、こいつが鷹のような目つきをしたヤクザである。(体中に刺青がある。)立派な背広は着ているが、中身はまぎれもないヤクザで、松子のために功をあせってなんと麻薬の密売に手を出し、ム所行きになってしまう。おまけに、出所したところを松子が笑顔で薔薇を持って迎えに行くと、松子の情の深さが怖くなって一散に逃げる。いわゆる回避依存の男の塊である。

松子は結局引きこもって精神科に行き、アイドル(光GENJI)に伊勢谷友介の面影を見て、夢中になって、最期は浮浪者殺人される。

まぁ、現代ではこういう女は「恋愛依存」という病名で片付けられるのだろうが、(確かに、父親(柄元明)にばかりしがみついていて、男達にしがみつくあげく捨てられる松子も悪い、)しかしこういう女を吸い取る回避依存症の男達もかなりのワルである。

最後に、救いになるのは松子の甥を演ずる瑛太の一言で、「人間の価値は、どれだけ人になにをしてあげたかじゃないのか。僕はああいうどん臭い女が大好きだ」というのである。

LOVE IS A DRUG。しかし、松子(主演・中谷美紀)の生き方はロックンロールである。

平成の世を引きこもりでついに知らずに終わる松子が、最初から甥である瑛太に出会えていたら、どれほど幸福であっただろうか。