共依存は愉しい〜「恋とはどういうものかしら?」

岡崎京子の、代表作を集めたアンソロジー

これを読んでいると、人間が人間にしがみつくと(つまり恋をすると、)こういう風に幸せになったり不幸になったりするもんなんだなとつくづく思う。・・・そういう、今流行の言葉で言うと、「共依存」のお手本例を、2ダース集めたような、まぁ教科書みたいなコミックスである。

いつか、ある人に、「君は僕に強依存している」と、(漢字の間違いではなく、意味的に)言われた事があるが、そういうもんでもなかったろうと今は思う。・・・人が誰かにしがみつく時、大抵相手にもしがみつかれているのが普通で、その関係にどちらかが耐えられなくなると「さよなら」と言うことになるのだ。

で。「共依存」から、人間が何か学ぶ事があるかないかと言うと、やっぱりあると私は思う。・・・それがなくなったら、青春期の終わりと言うものなのではないだろうか。

人間には、いつも建前と本音がある。世間の本音を学べる、貴重な体験が「共依存」なのである。これを体験しないと、大抵人は不幸なタイプのカウンセラーとか医者になったりする。何故なら、援助職と言うのは、世間の建前から認められた「共依存」職であるのだから。(・・・しかし、こういう援助職についた人間ほどやっかいな代物もないのだが。)

話を元に戻そう。・・・確かに、人は恋愛だけして一生を終わる訳にはいかない。たまに、そういう人間もいるだろうが、それはヤクザかあるいは一種の特権階級に許された贅沢(?)だろう。

何故なら、人には勤労の義務があると、憲法でもはっきり言われているからだ。勤労とSEXは、ご存知の通り両立しにくい。・・・しかし、それでもその間をかいくぐって「恋愛=共依存」してしまうのが、人間でありまた非日常と言うものなのだろう。非日常を知らない人間に、「日常」もまたない。

で。そういった悲喜劇を集めた、優れたアンソロジーであるこの本だが、やはり面白い事この上ない。どうやったら成功するのか、どうすると失敗するのかみたいな事が、非常に緻密に描かれている。・・・かと言って、これを読んだら「共依存」の奥義が、分かるものかというかと言うと、決してそんなことはないんだけどね。(笑)

人生、結局実行あるのみです。と、言って、身体だけで考えていても、またどうしようもないことになるのではあるが。面白い人生を歩みたかったら、頭で考えても、どうしようもないということですね。