愛していると言ってくれ〜「風と共に去りぬ」

何度読み返しても、男女の恋愛の基本を貫いた名作だと思う。

この副主人公、レット・バトラーは、「愛している」と言えない男なのだ。・・・古今東西、男らしい男と言うのは、すべからくそういうものかなとも思う。「愛してる」の代りに、「抱いてやる」としか言えない男。

・・・そういう男が、最高の男だと分かっていても、「愛している」と言えるのは、気障な文学青年かヤクザだけだと知ってはいても、やっぱり「愛してる」と、言って欲しいのが女という動物であったりする。で、「愛してる」と言わせた時は、大抵その恋愛は、終わっていたりするんだよね。

言うまでもなく、スカーレット・オハラも、また「愛している」と言えない女であったりする。最初は傲慢のために、そして次には絶望のために。

スカーレットを見ていると、つくづく女って、美貌に生まれついてもいけないし、もちろん苦労しちゃいけない動物なんだなと感じる。よく、スカーレットを自己中心的だという批判を聞くが、彼女の侠気なるものは、実にたいした物で、その辺の女性には到底真似できないだろうとも思う。

とにかく、ライバルである女を、レットの助けあればこそと言うものの、戦火の中を故郷まで連れて行って、おまけに実家が破産しそうになると、レットに「愛人にしてくれ」と言いにいくのだから。・・・ある意味、スカーレットは意外と、女の武器を知らないのかも知れない。

レットの愛に気づく事もなく、とにかくただひたすら自己を守ることで精一杯なのだから。可愛い女の典型ですらあったりするのかも知れないな、とさえ思う。

本当は不器用な、スカーレットにとっても、あるいはもちろんレットにとっても、「愛していると言ってくれ」というのは、魂の叫びであったのだろうが、すれ違いにすれ違いを重ねた上で悲劇に至る、大恋愛叙事詩ではある。

・・・ちなみに、レット・バトラーのモデルは、作者マーガレット・ミッチェルの最初の夫であるそうだが、一体どういう人物であったのか、再婚相手とはどういう人だったのか、興味深々である。・・・機会があれば調べてみたい。