読書日記

現代に生きる女の罪〜「ニート」

その後、絲山秋子の「ニート」について再考した事を書く。 大昔、あの橋本治が、「現代に生きる女は全てホモである」というような事を言っていた。かなりの極論ではあるが、これだけBLというものが流行するようになった素地を考えると、確かに言えていなく…

社会的足枷としての愛〜「愛なんかいらねー」

ブロ友の、ノナジュンさんのお薦めで、絲山秋子の「ニート」という短編集を読んだ。・・・特に、巻末の「愛なんかいらねー」を読んで、自分はだいぶ楽になった。 この、2人の男女の間に「愛」が無いわけではないのだろう。・・・しかし、普通男が女を愛する…

他力本願〜「finalventの日記」

私は、多分よく分かってなかった。 ヒッキーから抜け出せなかったのは、私が「自力本願」だったからだ。 自分一人の力では、人は何も出来ない。 少なくとも、喰っていくことは出来ない。 誰かが言ってた。「世間様に、喰わせてもらっていると言うことを忘れ…

生きとし生ける女たち〜川口晴美「lives」

川口晴美の「lives」を読んだ。 多分、私はまだこの人の境地に追い付いていないし、きっと行きつくところも違うのだろう。・・・でも、ここには都会に生きる女にとって、刺激的なフレーズがいくつも織り込まれている。 万引きをした14才の少年に向かって、…

オタク主婦のやるせなさ〜「ふがいない僕は空を見た」

これですが。 まず、のっけから何だけど、最初読んだ時は「なにこれ」でした。・・・要するに、欲求不満の、コミケ常連の主婦(注・アラサー)が、自分の憧れのアニメのキャラそっくりの高校生君と出会う。誘惑したところ、高校生君はほいほい「やって」くれ…

未熟なエリートへの嫉妬〜「告白」

どうも、よく理解できない小説だった。 何で、あの傑作、「下妻物語」や、「嫌われ松子の一生」を撮った、中島哲也監督が、この原作に手を出したのか、正直言ってよく分からない。 要約すると、主人公の女教師は、困窮の中から志ある教師を目指し、元ヤンキ…

少しずつ嘘をつくと言う事〜「ノルウェイの森」

この秋、公開されると言う「ノルウェイの森」を、ちょこっとだけ再読した。・・・それで、思ったこと。 この小説では、皆が少しずつ嘘をついている。例えば、永沢君のフィアンセ(?)であったハツミさん。 彼女は、永沢君の強さや、お金や、出世しそうな所…

おかしな夢を見た〜「オールド・ファッション」

先日、おかしな夢を見た。いつも、私の歴史(?)というか、社会に関する夢はそうで、細部は覚えていないのだが、結局、浅草かどこかにある日本では、ゲテモノの部類に属する服屋が、アメリカに上陸して大活躍している、とか言うヘンな夢だった。ま、ありが…

生きるとは〜「帰還・ゲド戦記4巻」

なんだか大袈裟な題名になってしまいましたが、ゲド戦記のファンの方、どうかお許しを。実は、このレビューで語りたいのは、ゲド戦記の事ではあまりなく、そうではなくて、つい最近のヒット「やれば出来る!」(注・読んでません)なんですな。「やれば出来…

私、オバマと結婚しました!〜「トラッシュ」

本来、私は「好きなもの」について語りたい、と、山崎正和が昔どこかで言っていて、「素直な人だなぁ」と、深く(その時は)共感した想い出がある。にも関わらず、今日はあえて「嫌いな作家」について語ってみたい。この山田詠美さんであるが。個人的には、…

DVと革命とSEXと小説と〜「1Q84」

いやぁ、村上春樹久々の大ヒットです。 「ダンス・ダンス・ダンス」以来、何かばったり読まなくなっていた村上春樹であるが。いやはや、筆力衰えるどころか、ますます凄まじいですね。・・・話題作「1Q84」まだ、前編の半分しか読んでおりませんが、そん…

現代のワンダー・ウルトラ・スーパー・ガール〜「聖母モモ子の夢物語」

本来は、TVドラマ雑感であるべきレビューだが、現在ビデオを紛失してしまい、脚本集だけを読んで感想を書いているので、あえて読書日記に入れた。 このTVシリーズは。唐沢モモ子(竹下景子)というソープ嬢が、毎回事件に巻き込まれ、命からがら助かると…

母国を喪った男とある女〜「凱旋門」

かつて有名と言えば、有名すぎるほどだった小説。(映画化もされている。) 主人公・ラヴィックは、ドイツ出身の堕胎医である。正確には、外科医であるのだが、第二次大戦の勃発を前にして、パリへ不法入国している男である。その愛人・ジョアンとの恋愛、か…

恋愛によって人間は変わるか?〜「男流文学論」

この本は、一応フェミニズムの本と言う事になっているが、語られている内容はもっと深い。それは一言でいうと、「恋愛なる幻想」について語っているかのように思える。 確かに。恋愛によって人間は高揚し、一瞬の深い快楽が得られるけれども、それが人生の全…

全てはフィクション〜「午後の曳航」

三島由紀夫の作品は、これしか真面目に読んでいないのが全く情けないが、例によってお許しを。 三島と言う人は、一言で言って「この世の全ての真理はフィクション」である、と、くそ真面目に信じ続けた人であると思う。・・・彼にとって、真実とは、美しい男…

5W1H〜「家族カウンセリングの技法」

アドラー心理学に、初めて出会った本。 これは、一言で言って、非常に感激した。感動ではなく、あえて感激と言う言葉を使わせてもらう。 ・・・個人的なエピソードになるが、私は4才の頃からカウンセラーに親が自分を預けっぱなしの人生を送っていた。で、…

愛していると言ってくれ〜「風と共に去りぬ」

何度読み返しても、男女の恋愛の基本を貫いた名作だと思う。 この副主人公、レット・バトラーは、「愛している」と言えない男なのだ。・・・古今東西、男らしい男と言うのは、すべからくそういうものかなとも思う。「愛してる」の代りに、「抱いてやる」とし…

修道士と売春婦〜「舞姫タイス」

昔から、大好きだった唯一の小説で、今も好きなただ一つの小説である。・・・ここには、神、哲学、信仰、女、そして白痴なるものがどういう関係性にあるか全てきちんと述べられている。 この主人公、修道士パフニュスは、全く神に救われない人物として書かれ…

失われた自画像〜「すべてがFになる」

昔から、小説と言う物、ミステリーが苦手である。にも関らず、この作品はわざわざ文庫本を買ってしまった。例によって斜め読みなのだが、この作品には確かに、過去の自分がいると感じた。それは、(何ともおこがましいが)天才工学博士、真賀田四季である。 …