資本主義と愛とは〜「ワン・ゼロ」

・・・いきなりで申し訳ないが、このレビュー(?)の要旨はただひとつ、「カウンセリングとは、金で親の愛を買う事だ」の一語に尽きる。

もちろん、カウンセリングでなくても、この作品「ワン・ゼロ」に出てくるような、一種の自己啓発セミナー(?)でも何でもいいのだが。資本主義の世の中というのは、金で愛を売る世界である。ちなみに別に、風俗の事を言っている訳ではない。アレは、合法的に性を売る場所で、それに付随して「愛」に似たものもついてくると言うだけの話である。

そうではなくて、いわば合法的に「愛」を、「愛に飢えた人」に売る商売というのが、身も蓋もないがカウンセリングなのである。 

カウンセリングの代金というのは、普通10分につき1000円である。・・・つまり、30分なら3000円。1時間なら6000円。手練のカウンセラーはもっと取るが、大体マッサージの代金と同じであるところが、何とも可笑しいと言うか皮肉である。

カウンセリングに来る人種というのは、もちろん悩んでいる訳だが、それ以上に「愛」が欲しいけど、自分で得る要領が分からん、という人達な訳である。

思わず、これを読んで心底冷え冷えしました、と言う人がいたら誠にごめんなさい。しかし、これは冷厳たる事実である。・・・だから、カウンセラーというのはまず例外なく金持ちなのである。・・・だって、国家公認の悩める「愛」のプロフェッショナルなんだからさ。「仮親」なんだからさ。

しかし、本当にカウンセリングでよくなった患者と言うのを、残念ながら私は知らない。・・・少なくとも、身の回りの実例では知らない、ただの一人も。

なんで?と考えてみたのだが。結局、心の病と言うのは「金で買った愛」では治せない、という、これまたぞっとするような真実に突き当たるしかありません。・・・唯一、カウンセリングで本当に治るとしたら、それは、たまたまカウンセラーと恋愛しちゃって、それが上手く行ってその後綺麗に別れられました、という例しかないような気がするのだが、それって完全に職務逸脱だからなぁ。

・・・しかし、矛盾しているようだが、この「職務逸脱」を、若くて暴走してたまにやっちゃうカウンセラーというのは居て、それが患者にとって一番助かる道であるのも確かなのである。

資本主義の限界を、そこに垣間見ますワタシは。・・・「愛」はやはり、「カネ」に付随してくるもので、「売る」対象ではないんですよ。所謂優れたカウンセラーと言うのは、その辺を上手く誤魔化して、決して重症患者と「共依存」しない、自分で治る力のある患者だけに関わるんですが。それは、歌舞伎町でナンバーに入るキャバクラ嬢は、決して金のない客に深入りしない、のと同じなんでしょうな。