細胞

放射能の降り注ぐこの街で
僕らは
白髪葱のかかったジャージャー麺を食べたり
電車で財布をすられたり
人に裏切られたり
タピオカの入った紅茶を飲んだりしながら
生きている
確かに生きている
僕らは
鯖の味噌煮を作ったり
人の書いた小説を読んだり
枝豆のスープを啜ったり
粘膜と粘膜をこすり合わせたりしながら
生きている
確かに生きている
僕らは
映画館でキスをしたり
人を怒らせたり
神様に感謝したり
ふっと空を見上げたりしながら
生きている
確かに生きている
放射能の轟々と降り注ぐこの街で
僕たちは
小さな真っ赤なポーチを胸に一個づつ抱えながら
泣きながら
歯を食いしばりながら
時々くすっと苦笑いしながら
生きている
確かに生きている
僕らは
この世界の細胞の一つ一つなのだから