5W1H〜「家族カウンセリングの技法」

アドラー心理学に、初めて出会った本。

これは、一言で言って、非常に感激した。感動ではなく、あえて感激と言う言葉を使わせてもらう。

・・・個人的なエピソードになるが、私は4才の頃からカウンセラーに親が自分を預けっぱなしの人生を送っていた。で、ま、あれこれのマッド精神科医と喧嘩別れを繰り返すのが生きがいであったりしたのだが。

一言で言って、フロイト以来、ユングにしろ今、流行のAC理論にしろ、その心理学の根底にあるのはいつも「神の代替物」であったりした訳である。・・・人間を、神の代りに、性とか、ハイヤーパワーとか言った、色んな概念で分析しては「裁く」のが心理学であり、だから治療者はいつも一種の「神=生き仏」であった訳である。

ところが。アドラーにはこのような思い上がりが全く見られない。ここで述べられているのは、「人間心理の分析」ではなく、「事態の分析」で、そのうえで「現実に、どうしたらベターなのか」という、ハウツウが述べられているだけなのだ。

・・・この本を、一人娘を持つ主婦の友人と一緒に読んだのだが、彼女の意見も全く同じであった。ここにあるのは「宗教」ではなく、日本で言う「躾」に近いものなのである。

だから。この本は、心理学に全く興味が無かった人、むしろ嫌いである人にこそお勧めしたい本である。ニーチェが言うように、「神は死んだ」のであり、誰も、神に取って代わる存在になることは出来ない。・・・出来ないのに、「○○教」なるもののような浅はかなものを作りたくなるのが、人間の業であるのだろうが。

「神は死んだ」時代の、新たなる心理学の到来を感じた1冊である。・・・カウンセラーの驕りを打ち砕く一作であるかも知れない。

本来なら、昔であれば賢い伯父伯母であるとか、学校の先生であるとか、そういう目線から書かれた、易しく分かりやすい、家族の問題に関するアドラー心理学。ゆっくりせんべいを食べながらでも読める、1冊であるので、是非現代の全ての悩める親御さんにお勧めしたい。