どうも、よく理解できない小説だった。
何で、あの傑作、「下妻物語」や、「嫌われ松子の一生」を撮った、中島哲也監督が、この原作に手を出したのか、正直言ってよく分からない。
要約すると、主人公の女教師は、困窮の中から志ある教師を目指し、元ヤンキーで構成した「世直しやんちゃ先生」と結ばれるが、彼は一時期、外国でめちゃくちゃご乱行していたため、エイズに罹っている。・・・そのため、彼女は結婚を諦めてシングルマザーとなり、愛娘・愛美を産むが、この子どもは、生徒の一人に殺されてしまう。
この、彼女の復讐劇が本作である、訳なのだが・・・。
生徒の一人と言うのは、昔、学者であった母親に棄てられた傷から、精神状態がおかしくなっていると言う設定になっている。この、生徒にまず、彼女はエイズ血液入りの牛乳を飲ませようとして失敗し、次に、彼が作った爆弾を、学校ではなく、彼の母親がいる大学に、仕掛けると言う犯罪で終わりになる。
なんか。
私が感じたのは、これはもはや、娘のための復讐と言うより、自分のための復讐なんじゃあないかと思った。
「世直しやんちゃ先生」であるパートナーが、更生させられなかった、エリート少年の才能、自分がなろうとしてなれなかった少年の母親の地位に対する、恐るべき嫉妬が、その裏に隠れているような気が、なんとなくした。
彼女は、彼を「甘えている」と言う。・・・しかし、では彼女は、あるいはパートナーの「世直しやんちゃ先生」は、汚れていないのか。立派な事を口で言いながら、自分のためには何でも出来る人間なのではないか。
そこには、まさに本人が言う通り、「聖職者」どころか、「先生」らしいところはどこにもない。・・・エゴの、塊でしかない点で、彼女と彼は、同じ者の裏返しであるように私には思えた。
ここには、他人に対する攻撃しかない。・・・そういう意味で、全くヒューマンなものから離れた作品だと思った。
付け足すと。私は、どちらかというと、この「彼」に近い境遇で育ってきたけれど、この「彼女」のタイプの人間には、いつも利用された想い出しか、ないからかも知れません。・・・そういう訳で、世間の標準からは少々見方がゆがんでいるかも知れないけど。
貧しいものこそ、地の塩だと言う聖書の言葉からは、もはや遥に遠い世界だと、思った。