遠くまで来た

雨の中、赤味噌と片栗粉とピエモンテ・ミントのフリスク

深夜のスーパーの地下で買って、真っ赤な傘をさしてひとりきりのマンションへと歩く

ずいぶん遠くまで来ちゃったな

今はもうない

実家で引きこもっていたころは、赤味噌の値段も、

ひとりぼっちでフリスクを噛む切なさも、スイカのチャージの方法も知らなかった

成長することは、

何かを置き去りにしてくることだ

あの頃持っていた優しさも涙もおせっかいも純情も

私は信号ひかる雨道の途中においてきた

今だっていつだってさみしいけれども

孤独を癒やす方法も覚えて、わたしはうそつきになった

ふりかえれば、

進んできた道が曲がりくねった蛇の影のように

自分の後ろにずっとつづいてた