五月

彼女は昨日恋人と喧嘩をした
それはとても悲しく思えて彼女はお風呂で泣いた
それから初夏の化粧をオイルで落とした後
深夜に小説にその経緯をつらつらと書いた
彼女は朝起きる
それから白いシャツを洗濯する
匂いのきつい柔軟剤をたくさん入れて
それから全粒粉のパンとベーコンエッグとルッコラのサラダで朝食にする
彼女は駅への道を高いヒールでカツカツと歩いてゆく
ビル風の吹くホームに立つ
そして自販機でソルティライチの瓶を買う
電車の窓から見える欅が鮮やかだ
彼女は講座で小説を朗読する
それからティールームで冷えた紅茶を飲む
家に帰ると
冷やし中華を作りメロンのシャーベットを添える
彼女は笑ったり怒ったり泣き出したりする
夜はまたPCに向かう
それからふっと目をあげて天井を見る
先週にカウンセラーが夜は早く寝なさいと言った
道理である
彼女は寝る
一人で起きる
たまに恋人のペニスをくわえる夜もある
彼女は掃除機をかけてクイックルワイパーを押す
それから観葉植物に水やりをする
明日はブライアン・イーノのCDを買おう
人生は何かを穿ちつづけるようなものだ
生きている限り
死に近づき続ける限り
今日一日を
彼女は歩く
歩き続ける