本当のこと

時々、支援所にいて憂鬱になる瞬間がある。

私のいる支援所にいる大抵の子は、いわゆる引きこもりに近い子たちである。・・・支援所に来て、仕事らしきものができるだけ、本当の引きこもりと言うのとは少し違うのだろうが、それでも皆二〜四時間支援所で作業をするとまた家に帰ってゆく。注をつけておくとそのうちの半数以上が、三十代四十代である。

問題は、その子たちに母親が大抵お弁当を作って持たせていることだ。それだけならまだいいのだが、そのお弁当を食べている子たちに向かってスタッフが、「いい親御さんだから感謝しなくちゃだめよ」といつも言う事だ。

私が思うに、それは本当に愛情なんだろうか。

親の子どもに対する愛情と言うのは、子どもが自分たちがいなくなっても生きて行けるように手助けすることではないんだろうか。飯炊きを覚えさせ、洗濯が自分でできるように教え、掃除と片付けをするようにしつけることではないんだろうか。

むろん、「この子は病気だから、それができない。だから代わりにお弁当を作ってあげるのがやさしさ」という返答もあるだろう。・・・しかし、今、私の住んでいる街には少なくともお弁当を買えるコンビニは腐るほどあるのだ。

そういう親御さんの内心をよく聞いてみると、「私たちが死んだら、よくて施設行きか病院に一生入院するか、生活保護はせめて受けられるだろう」と言う。・・・しかし生活保護を受けて一人暮らしして、その子がお米が研げるかどうかすら考えていない、むろん自分たちでは米の研ぎ方など教えもしないし、洗濯機すら回させないことになっている場合もある。

実は、他ならぬ我が家もそうだった。

そういう偽善に対して、「親御さんに感謝しなさい」とか、「いい親御さんよ」とか、「可愛くってしょうがないのよね、あなたが」と嘘をつくのはもうやめにしないか。

あなたの親は、あなたの本当の幸せなど何にも考えちゃいないよ。

そう言いかけて、いつも私は支援所で居心地悪く口をつぐむ。「さわらぬ神に祟りなし」と言う諺を思い出して。