ひとはただしく生きようとすればするほど
何だかどんどんひからびてゆく
まるで揺りかごをゆらす母の律動を忘れたかのように
けもののようなふるまいは夜に身を潜め
昼間は仕事をしてきりっと背を伸ばして
休憩時間にラーメンを食べてばかばかしい話をするのが生きがいになってゆく
会社を終える年になって
麺類を噛み切る歯がそろそろ弱くなってきて
からだの節節に皺ができて
だんだん子どもにもどってゆく
そうするととても潤っていた日々の事が思い出されて
若さに溜息をつきわるいことがいとおしくなり
人はまた同じことをくりかえしくりかえし語るようになり
だんだんと幸福へかえってゆくのである