ある男

ある人に、別れとも取れる手紙を出した。・・・返事は来ないけれども、私は彼を信用している。それは何故か。

・・・彼はおそらく、叩けばいくらでも埃の出る男だっただろう。酒と女に溺れたこともあれば、人を騙すこともあるのだろう。しかし、その分彼には、体でものがわかっていた。

私が病気だからと言って、家に来るのを躊躇ったり、私の人格を馬鹿にしたりしなかった。・・・私にはそれが嬉しかった。

彼が、私の持っているものに強く惹かれたのは事実だろうけれども、私と一緒に暮らしたい、結婚したいと言う気持ち自体に、嘘偽りはこれっぽっちもなかったと今は思うのだ。

要するに、彼はいわゆる「いい人」ではなかったけれども「偽善者」ではなかった。

例え、彼がホストになろうがホームレスになろうが、私はこれからも彼を信用するだろう。金にだらしないという点には目を瞑る、という条件つきでだが(笑)。