現代のファム・ファタール〜「ヘルタースケルター」

ご存知、岡崎京子巨匠の、最後の長編。これを最後に交通事故に遭い、リハビリの人生だそうで、あまりに不吉な作品であるので、今まで取り上げるのをためらっていたが、今回何故か書く気になった。

この主人公、りりこの不幸は、整形してスターになったこと自体にあるのではないような気がする。・・・それは、最近の作品「カンナさん大成功!」の成功にも見られるとおりである。そうではなくて、りりこの不幸は、その存在が全ての男性を魅了してしまうところにある。つまり、彼女は現代の「ファム・ファタール」なのである。

彼女を愛した男も、捨てた男も全員不幸になっている。そうではなくて、例えばりりこをやり逃げして幸福になった男がもしいたとしたら、りりこもどこかで諦め(?)がついて、No.1アイドルではなくて、どこかで中途半端にさすらう道も選べたのかも知れないが、りりこはそういう女ではなかったのだ。

自分を捨てる男がいれば、徹底的に復讐するし、自分が不幸だと分かれば、徹底的に破滅への道を選ぶ。りりこは、おそらく男にも女にも愛された事が一度もない女なのだろう。「カンナさん(韓国版しか見ていないが)」が、あっさり冴えない(失礼)イケ面マネージャーと平凡極まりない幸せを掴むのとは、実に正反対である。

どうも、ここまで書いて、何故だか最近亡くなった飯島愛の面影が、りりこにダブってきてちょっとコワい。真のスターと言うのは、ああいうものだとは感じつつ。・・・岡崎京子も、とてつもなくきっとエキセントリックな女性であったんだろうなぁきっと。

普通、アラフォーを越える辺りで、誰しもこういう生き方は諦めざるを得なくなるもんなんですけどね。潔いかのようなりりこの絶対的不幸。なかなか、普通の女に真似できるものじゃござんせん。