妻こそ同志〜「武士の一分」

2006年、話題をさらった木村拓哉山田洋次の初コンビ時代劇。

ここで、キムタクとは、華のある俳優だなと改めて思った。特に、ちょんまげが似合う訳でもなく、着物姿がやたらと絵になる訳でもないのだが、それでも、質素な毒見役姿でも、5人並べばその凛とした美貌がはっきりと際立つ。やはり天性のスターであろう。

ここで、キムタク演ずる武士が面白いのは、途中で盲目になるのも然ることながら、結局「妻の操のために命をかける」という「一分」でしょうね。・・・こういう男は、日本の映画史の中で今までいなかったタイプである。

それまでの、ステロタイプな日本の男性像と言うのは。「仕事のため、上司のため、友情のため」に命をかける、というのがカッコよくはあっても、なかなか女のため、それも「糟糠の妻」のために命をかける、という発想に、なぜか至らなかった訳ですよ。・・・それを、木村&山田コンビはあっさりとやってのけた。やはり、二人の天才の成せる技である。

最後の果し合いで、キムタクは、妻(壇れい)の、たすきを鉢巻きにして出掛けるのだが、これが多少の哀愁は漂うものの、決して女々しくなっていない。壇によれば、これはキムタクの発案からくるものだそうだ。正直、女として泣けに泣けるシーンである。流石。

・・・実は、私はキムタクのあの冷たい切れ長の眼が気に入っていて、「眠狂四朗」を、彼でもってリメイクして欲しいと言う希望を、一方で持っているのだが、某ストリーキング程度で、韓国に飛ばされる日本の現状では、女を犯しては賛美される役は、TVではもう無理だろうなぁ。もっとも、人間とは常に二面性を持っているものなのだから、一方でそういう反社会的な役をやったっていいと個人的には思うんですが。

蓮実重彦によれば、山田映画はアメリカ映画でもあるそうだ。改めて納得。どこまでも正統的に泣ける映画です。キムタクファン以外も是非見よう。