フライパンで殴りたい〜「きのう何食べた?」

世の中には、どんなに好きでも、一緒に暮らしたくない男と言うのがいる。・・・唐突で、申し訳ないが、この短編集の主人公、筧史朗は、まさしく私にとってそういうタイプかと思われる。

実は以前。ある男性を、その男性愛用のコーヒーメーカーで「殴り殺したい」と言ったことがある。女性の友人は、「いや〜ん、のろけでしょ」と言った態度で、全く本気で相手にしてくれなかったが、双方をよく知っているお爺さんが、真っ青になって止めてくれた。(つまり、実際に有り得る事件だと思ったらしい。)

現実には、もの凄い大喧嘩しただけで「殴る」には至りませんでしたが、あの時は本当に、男にコントロールされているのがもう不愉快で不愉快でどうしようもなかったのである。

で、何故ここで筧史朗が出てくるかと言うと。43歳にして大変なハンサム、料理は出来る、しかも有能な弁護士と言う非の打ち所のないパートナーとして登場しているのだが、①自分の非を絶対に認めない、②自分の長所を知り尽くしていて嫌味、③お山の大将、とまぁ3拍子見事な欠点の揃った、誰だって殴りたくなる嫌な奴(私だけかも・・・もしかして)だからである。

よしながふみの主人公と言うのは、どうも得てしてこういうタイプが多い事に、最近はたと気づいた。徹底的に、パートナーを馬鹿にしつつ付き合うタイプ、っつんですか、こういう男、好きになる事は確かに多いのだが、二人の時間を過ごすと上手く行かない事がやっと分かった。こいつが料理をしている後姿を、フライパンで殴りたくなっちゃうんですね。

どういう訳かは、よく分からない。能力があるんだから、プライドが高いのは当たり前だろうし、世間を斜から見ているのも仕方ないのかも知れないが、やっぱり殴りたくなる辺り、私もどこか、女性の友人達に甘く認識されているほど「可愛い女」ではないのかも知れません。

だったら、この筧史朗と上手くやっているパートナー、矢吹(注・男性。つまり筧は真性ゲイですが、私はどうも本当は仮性ゲイとして生きていた方が楽なのでは、と思える男性に引っかかる確率も実は高いです、)のような、たる〜い男性なら上手く行くかと考えると、それはそれでやっぱり、あまりの男らしくなささにいらいらしてこっちも殴りたくなりそうだ。

こんな自分と、リアルで上手く行く男性は果たして?と、この頃真剣に考え始めた。・・・どうも、少女漫画の中にはまじいなさそう。