私、オバマと結婚しました!〜「トラッシュ」

本来、私は「好きなもの」について語りたい、と、山崎正和が昔どこかで言っていて、「素直な人だなぁ」と、深く(その時は)共感した想い出がある。にも関わらず、今日はあえて「嫌いな作家」について語ってみたい。

この山田詠美さんであるが。個人的には、山田詠美個人は決して今まで嫌いではなかった。ポートレイトも、年に似合わずいつも格好いいし、インタビューも(共感はできなかったが)「自立した女」を漂わせている。・・・むしろ、昔の私的に「お洒落で知性のある、憧れの女性像」であったくらいなのである。

なのに。作品は、何故かあの独特の文体がダメで、ずっと未読だったのですが。今回、この「トラッシュ」に手を出して、最初の5ページで、はっきり言って投げだしました。・・・これ程、自分から遠い女性もいないと真剣に思いました。

まず。いちいち箇条書きにしたくないが、「自分が幼い頃、父と母の愛情に包まれてきて、それが自然であると信じて疑わなかった」という一文が、既に自分的にダメである。・・・嫌悪感である。こんなこと書きたくないけど本当に、こういう「幸せな女性」言うのは自分的にNOである。

その二。「偽悪的な態度や発言から、羞恥心はあっても、まるで悪意のないという真意を相手が汲み取ってくれる(のが理想)」というのが、げろげろである。何と評していいか分からない程、気持ち悪いと言っていい。

その他にも。例えば、「女は女は」という主語が頻出するのだが、この人は一体、自分が全女性の感情の、代表器官だと思っているのだろうか。

ここまで書くと、「じゃ、貴女よっぽど不幸な女性なのね」と言われそうだが、多分その答えはYESなのだろう。・・・こういう幸福な、いや健康な女性、友人としては最高だと思いますが、図らずや、親友の日記を盗み読みしてしまって、自分との落差にげげげのげ、ああ読まなきゃよかった、と いう感じに似ています、はい。

・・・要するに、最後まで斜め読みした結論を先に言うと、「私、白人のくずと別れて、オバマと結婚しました!」って言う、今をときめくミシェル大統領夫人の手記なんですよ、これ。

なんだかもう、絶望的な気分になるばかりなので、読むのを途中でやめましたが。・・・この、山田詠美という方、どうして作家におなりになったのでしょうか。自分的には、こういう方は、本当にNYに住んで、文章なんか書かないで、こういう生活をしていて欲しかったです。

何と言うか。あの、「勝間和代」さんが、人生読本なんかに手を出して、「負け組」全員をさらに不幸のどん底に突き落とす真似をしてしまったのと、同じような感触というか。いや、山田詠美さんの方が、悪意がないだけもっと酷い打ちのめされ方をした感じがしてしまいます。本当に。

「作家」というのは、マイノリティの味方であるべきと、常に勝手な感想、いや信念を抱いているわたくしですが、こういうマジョリティの極致(精神的にです、もちろん)な女性もいるんだなぁと。こういう感想書いたら、山田詠美さんとしては、どう思われるか全く不明だけど。・・・多分、ご本人(ああ、こういう皮肉な言い方したくないですけど)は、マイノリティの味方である御気分であろうから。

なんだか、今回は実に後味の悪いレビューになってしまいましたが。「成功した人」が、ぶんがくなんか書くなよな、って不幸な女の遠吠えです、どこまでも。